四葩と猫11

11

10

バカ、震えながらなに言ってんだ。

息を吸って、呆気なく壊れた表面張力。

泣くほどビビるくせに、そんなこと簡単に言うもんじゃないよ。

ちがっ泣いてなんか

ああ、あんなに堪えてたのにやっちゃった。

最初の一粒で堰を切ったように溢れ出した涙が先生を躊躇させ、またとないチャンスをふいにしたんだと理解する。

目、擦るな。こわがらせて悪かったよ。

ほら、そんなに泣くなって。からかい過ぎた先生が悪かったから、な?

やだ、無かったことにしないでよ。

それに、恐がってるのはオレじゃなくて先生のほうでしょう?

違うもんっ!オレ、ほんとに先生と

はいはい。わかったから、

少しも本気じゃなかったの?

あくまでもお遊びだったことにして、オレの気持ちと向き合ってくれるつもりはないってこと?

わかったから無理するな。

ふふっ、俺に悪戯されたかったら、もっと色っぽく誘ってみろ。

だったらなんで、そんなふうに期待させるようなこと

眉を下げた先生はしがみつくオレをそっと引き剥がし、困ったように力なく笑った。

ああもう、ほんと、

先生もだけど、オレのばかっ!

涙、とまったか?

泣いて、ないもん。

きっと、あとちょっとだったのに。

あと少しでオレは、特別な生徒から特別な存在になれた筈なのに。

そっか。ならいい。

先生まだ仕事あるから残るけど、もう下校時間だから相葉はそろそろ帰りなさい。

ずるいよオトナなんかキライ

そんな顔されたら、わがまま言えなくなっちゃうじゃん。

熱があるんじゃないかと心配になるくらい温かい手のひらが、促すような強さで肩を押す。

せんせオレ、迷惑だった?

やんわりとした拒否が涙腺を刺激して。

乾いてつっぱった頬に再び零れだした涙を、拭ってくれようとしたのか伸びてきた手は、

じゃあな、気をつけて帰れよ。

雨でくぐもったチャイムの音を聞くと、触れる寸前でぴたりと止まった。

つづく